逃げ恥じゃなくて飛び恥

みなさんこんにちは!

「飛び恥」ってご存知でしょうか?

「逃げ恥」はあの有名なドラマですが「飛び恥」って??

 

これは二酸化炭素排出の多い飛行機の利用を避けて鉄道などの他の移動手段を選んだりする

反フライト運動のことです。

英語ではFlight Shameと言って主にヨーロッパで広がっているようです。

 

飛行機の乗客1人あたりのCO2排出はバスの2倍、鉄道の6倍に上ります

世界のCO2排出量のうち3%が航空部門から出ています。

 

国土交通省のHPから引用すると、日本のCO2排出量全体のうち18.6%が運輸部門からでそのうちの5.1%が航空部門からの排出となっているので、全体のうちでは1%程度になるでしょうか。このうちどれだけ国際輸送が含まれているかは不明ですが。

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日本では菅総理所信表明演説で「カーボンニュートラル2050宣言」というものがありました。

これは2050年度までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標です。

全体としてというのは温室効果ガスの排出量から森林などによる排出を差し引いてゼロにするという意味です。

 

その「カーボンニュートラル2050宣言」に伴って「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。

これには電力等の14分野に及ぶ産業での成長戦略で、そのうち航空機の運航におけるCO2削減についての検討事項は次の3つです。

 

① 機体による削減

②管制高度化による削減

③燃料による削減

 

①機体による削減

これは飛行機の軽量化効率化を進めるということになります。

例えばボーイングでは機体の電動化を進めています。

例えば飛行機の舵となるエルロン、エレベーター、ラダー、さらにはフラップなど、飛行機の内部には動かす力が必要な仕組みが色々あります。

今までの飛行機はそれらは油圧、空気圧、電力の三種類を用いて動かしていました。

三種類あるということはそれぞれに配管や配線が必要でそのぶん重量は増えます。

 

最新のB787では極力、空気圧での作動を減らし電動で動かすようにしています。

また油圧も圧力を従来の3000psiから5000psiに高めて作動油の量を少なくして軽量化に成功しています。

また電気で動かす方が効率が2%上昇するようです。

 

将来的には空気圧、油圧も全廃し全て電気で動く電気飛行機をボーイングは目指しているようです。(エンジンを除く)

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他にも機体をアルミでなく複合素材で作ったり機内の備品を軽量化したりしています。

 

さらに将来に向けては電気でプロペラを回して飛ぶ電動航空機や水素を燃料にして飛ぶ水素航空機も開発されていくようです。

 

電動航空機はプロベラになってしまうので超小型機がメインになると思います。

大型機の分野ではエアバスが35年実用化を目指して水素飛行機の計画があるようです。

 

空を飛ぶ飛行機は信頼性が一番なので意外に新技術の採用には時間がかかるかもしれません。

なにせ太平洋の上を数百人乗せて飛んで行くので途中でのトラブルは大問題になるからです。

 

②管制高度化による削減

A地点からB地点に向かうのにジグザクに行くよりも真っ直ぐ向かう方が飛行中に使う燃料の量は少ないのは自明のことです。

一昔前までは飛行機は飛行機向けに電波を出している施設に向かって飛んで行き、

到着したらまた次の電波を出す施設に向かって飛んでいっていました。(下図のTraditional Navigation)

なぜなら空に道しるべはないので雲の中などでは方向がわからなくなるので、その施設から出されている電波を頼りに飛んでいました。

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現在ではRNAV航法と言って、GPSの緯度経度で決められたWaypointを結んでできるだけ直線的に飛行できるように工夫されています。

 

また、空港に向けて到着機が集中すると空中で待機Holdingしたり遠回りさせられたりします。国内では羽田空港到着機は遠回りと速度調整、伊丹空港ではHoldingが多い印象です。

この間の燃料がもったいないので地方空港出発の時間を指定して到着機の集中を回避する試みもやっています。

 

③燃料による削減

私的にはこれが最も効果のある方法だと思っています。

それはバイオジェット燃料の導入です。

 

バイオジェット燃料とは廃油やゴミ、木屑などから作った燃料です。

また藻類から油を取り出して作るバイオジェット燃料もあります。

この燃料はSAFと呼ばれます。Sustainable Aviation Fuelの頭文字です。

 

これらの燃料を燃やしてもCO2は排出されますが、もともと植物が自然界から吸収したものを排出しているだけということでCO2削減になると考えられています。

この考え方をカーボンオフセットと言います。

 

SAFの利用は世界中に広がっていて既に20万回程度フライトに使われています。

しかし日本は非常に遅れていてANAJALが試験的に使っただけでニュースになるほどです。

 

SAFの利点は今までのエンジンや給油設備をそのまま使えることです。

ただ燃料が替わるだけでいいのです。

 

現状は100%SAFではなく、SAFと従来燃料の混合で作っており、SAFの混合量の上限も最大50%までと決まっています。

今後はこの上限も撤廃される方向に向かっています。

現在の日本は燃料はほぼ全て輸入ですが、SAFは国産も目指しています。

 

国産SAFを作っている会社で期待しているのはユーグレナです。

ユーグレナミドリムシという意味でミドリムシ由来の食品や化粧品を販売してきたヘルスケア会社ですが、バイオジェット燃料の研究開発も行っておりました。

 

2021年6月には試験プラントで作った国産SAFで飛行機を飛ばすことに成功しています

 

課題はコストで現在この国産SAFは1L10000円するそうです。

これは生産量が少ないからであると社長の出雲さんは言っています。

2025年完成目標で商業プラントを完成させ年間25万KL製造したら1L100円程度に下げれるとも出雲さんは語っています。

現在のユーグレナの試験プラントでは年間125KLしか製造出来ないので、完成予定の商業プラントと2000倍の違いがあります。

価格も単純比例とすると1L50円の計算になるので、1L100円も不可能ではなさそうです。

 

SAFの世界最大手のフィンランドネスタ社は年240万KLの製造能力がありますのでまだまだ背中は遠いですがユーグレナを応援したいのでユーグレナの商品を買うことにしました。

 

国内線の年間の燃料消費量はコロナ前で500万KLでした。

いつの日か国内線を全て国産SAFで賄えるようになることを願います。